むかし 富士河口湖町(上九一色村)に、、なかのええふうふがおった。
ところが、なん年たってもぼこ(子ども)がさずからん。
「一人でええから ぼこがほしいのう」
ある日、おもいあまって二人は水神(すいじん)さまにがん(お願いごと)をかけることにしたんじゃと。
「水神さまは 水の神じゃけど、きっとぼこをさずけてくださるかもしんねぇ」
「どうぞ かわいいぼこをさずけてくだされ」
二人は雨の日も毎日ごむしんにいっただと。
そして おまいりの、今日がさいごちゅう日に・・・。
「おやまぁー!」
「ちっくいへび!」
ほこらの中からでてきたのは、ぼこじゃのうて ちっくいへびだった。
「人間のぼこじゃねぇけど、大事な さずかりものじゃ!」
二人は ちっくいへびをつれ帰り、竜吉(りゅうきち)と名付けてたいそうかわいがった。
そうして自分たちが食べるもんをへらしても 竜吉にはうんと食べさせたんじゃと。
そのせいずらか、竜吉はどんどんでっかくなって住ませるところもなくなってしまった。
「もう くわせるもんも ねぇずら・・・」
ふたりはどうにも困りはてただと。
そこで へびむすこを水神さまのほこらにつれていった。
「神さまからさずかったぼこだけど、もう おらたちの手におえん。山でくらしてくれや。なにかようがあれば、ここへ来て呼ばるから そんときゃあでてくりょう。 たっしゃでな。」といいきかせたとさ。
竜吉はそのことばがわかったのか、うなずくと草むらの中にすがたをけしました。
それからなん年もすぎた。ある夏のこと ひどい日でりがつづいて作物はかれそうになっちまったと。村のみんなは いっしんに雨ごいをしたけんど、いっさら きき目なかったんだと。
おだいかんは とうとう
「雨をふらせたものには ほうびをとらせる」というおふれをだしたっちゅう。
そのころ 竜吉の親は年とって じいさん、ばあさんになっておったとさ。
「なあ、ばあさんや、ひとつ竜吉にたのんでみっか」
二人はひさしぶりに山へのぼっていった。
「おおい。竜吉やぁい、竜吉よう」とよばあったと。
すると あたりの木が ゆっさゆっさゆれて、でっかいへびになった竜吉がでてきた。
「おお竜吉、立派になったなぁ!」
二人は えろううれしかった。
さっそく じじょうを話して、なんとか雨をふらせてくれんかいと竜吉にたのんだ。
すると竜吉は「わかりやした。あしたから七日の間 しずかに雨をふらせてあげやしょう」というと、またすがたをけしたと。
二人はおだいかんのところにいって、竜吉が雨をふらせてくれるとはなしたと。
「もし、それが本当なら ほうびはなんぼでもやろうぞ」
次の日から、竜吉のいったとおり雨がふりだし、七日の間ふりつづいて 作物はみちがえるように生きかえったと。
じいさんばあさんはどっさり ほうびをもらったっちゅう。
「竜吉や、はたらけなくなった おらたちもわれのおかげで一生くらすことができるじゃん」
二人はそういって まい日まい日竜吉のいる山に向かって頭をさげておったと。