むかし、オウスノミコという力の強い王子がいました。
オウスノミコは、つまのオトタチバナ姫をとてもあいしていました。
ある日、天皇(てんのう)はオウスノミコに「九州のクマソ(九州南部に居住していたといわれている一族)をせいばつせよ」と命令されました。
オウスノミコはすぐに九州に行き、みごとクマソをせいばつしました。
この時から オウスノミコは「ヤマトタケルノミコト」とよばれるようになったのです。
国へ帰ると今度は「東の国のせいばつに行って来い」と命令されました。今度は苦しいたびでした。海はすごい嵐となり、今にも船はしずみそうになったのです。
すると オトタチバナ姫は、「私が海の神の怒りをしずめましょう」と言って海に身をなげました。すると海はたちまちしずかになり、さらに東へと向うことができました。そして ぶじにせいばつすることができたのです。
あいする姫をなくしたヤマトタケルノミコトは、悲しみをこらえつつ旅をつづけた帰り帰り道 明神峠(みょうじんとうげ)をこえて 山中湖の近くにきました。湖はしずかに広がっています。ヤマトタケルノミコトは またオトタチバナ姫を思い出しました。
すると そのとき、きゅうに明神峠の上に、雲があらわれました。
それは オトタチバナ姫のけしんだったのです。
「ヤマトタケルさま、私はこれからもいつもあなたを見守っています。 どうか元気で旅を続けて下さい。」
なつかしい姫の声でそう言うと、白い竜は山中湖を二つにわけて、水の中に消えて行きました。
それからの後、ヤマトタケルノミコトは白竜に守られて、ずっと いくさに勝つことができたということです・・・。
白竜は、湖にのこり、村人たちの守り神になりました。
村人たちは、白竜をまつって湖の近くに神社をたてました。このやしろが 山中明神です。
山中明神のさいてんの時には、白いくもがわきたち、明神峠から山中明神にむかって しばらくのあいだ山中湖の水が二つにわかれるようになった、といいつたえられています。
きっと白竜が湖をわたっているのでしょう。